図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
翌朝はやっぱり晴れだった。
蓮が席についても、うるさいくらいの二人がまだいなかった。
不思議に思って・・・。
蓮は「あ」と一声上げると教室をいきなり飛び出して走っていった。
「おはよって蓮?」
欄の声も耳に入らない。
向かう先は3年生の棟。
3組は・・・・その一番先。
「新!祐介!」
その声に反応して二人が手を挙げる。
「遅かったな、蓮?」
廊下の窓越しにいるのは・・・・美優。
「おはよう」
耳をくすぐる優しい美優の声。
「お、はよ。いや、ってか、なんでお前ら!」
「いや~、無事、家に着いたか心配でさぁ、な?」
新が祐介に振る。
「そうそう、とりあえず、無事な姿を見ようかと」
隣でくすくす笑う美優。
それだけで蓮の力が抜ける。
「あーもう、ってか、あの後、痴漢とか会わなかった?」
蓮は美優に向き直った。
「――あはははっ」
美優が声を上げて笑った。
それだけで、蓮の顔が赤くなる。
「えっ、なんか変なことゆった?」
横を向くと新と祐介も声を殺して笑ってた。
「それ、・・・・もう俺が言った」
新が笑いをかみ殺して告げる台詞に蓮は髪をクシャリと掻き揚げた。
「な、んだよ、それ!」
リーンゴーン-・・・・。
鳴り響く予鈴。
「ほら、帰るぞ!」
蓮は顔を真っ赤にしたままさっきは知ってきた廊下を引き返そうと二人の腕を掴んだ。
「じゃね、美優ちゃん!」
「またね、美優ちゃん。」
二人が口々に美優の名前を呼ぶ。
そんな二人に美優は笑いながら手を振ったが、蓮だけは振り返ることが出来なかった。