図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
5時限目の始業ベルが鳴り響く。
美優はそれを非常階段の1階と2階の間で聞いていた。
みことの手を振り切ったのだから、教室にも帰れず、
美優は誰もいないここを選んだ。
外階段にも関わらず、ここに日の当たることはない。
この階段に座り、両膝を抱えて、美優は泣いた。
こぼれ落ちる涙は止めどなく、スカートに落ちては消えていく。
「相原さん?」
突然の声に美優は顔を上げ、振り返った。
その声は、理科準備室の窓からのもので・・・・・・。
「荒木・・・・・くん?」
「えっ?泣いて、んの?」
その台詞に美優は慌てて涙を拭った。
そして、立ち上がり階段を下りようとしたとき、
「待って!相原さん、そこにいて!」
美優が振り返ったとき、その窓にはすでに荒木の姿はなかった。