図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「美優!」
その声を聞き間違えるはずがなかった。
美優は階下をを見ることなく、手すりから一歩後ろへ下がった。
その瞳には拭ったはずの涙がまた浮かぶ。
それを見て荒木が優しく美優に言う。
「君は熱があるんだよ、だから、こんな寒いトコにいちゃダメだ。そこの扉をあけて、中で待っていて」
美優は荒木の顔を不思議そうに見上げた。
「美優、すぐ行くから、待ってろ!」
階下から聞こえる声。
その後に続く、階段を上がってくる足音。
美優は、ゆっくりと小さく頷き階段を上がった。