図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


「美優!」


蓮がそこにたどり着いたとき、美優の姿はなく、荒木だけが蓮を睨み付けていた。


「どけよ、そこ」


肩で息をする蓮の額には、この寒空には似合わない汗が滲む。


「どかない」


荒木がきっぱりと告げる。


「相原さんをあれだけ泣かせて、今頃なに?まだ、彼女で遊び足りないの?」

「いいから、どけよ!」


横を通り抜けようと蓮は苛立つ気持ちそのまま、乱暴に荒木の腕に手をかけた。


「行かせない!」


荒木はそんな蓮の手を振り払い、両手を広げた。


「関係ないだろ?お前には!」

「関係ある!」


そう言いきる彼の顔を蓮は睨んで、思い出した。


「あ、お前、図書室で…」


彼は美優に告白しようとした男。

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