図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「女を泣かせるなんて最低だな」
いつか聞いた台詞に蓮は唇を噛みしめた。
「俺は美優に話があるんだよ」
今までにない低い声で蓮が言う。
「彼女は無いみたいだよ?」
荒木は美優が消えたドアに目をやった。
「開かないドアが彼女の意志を示してると思わないか?」
「っるさい!」
蓮は思いっきり荒木を手すりに打ち付けた。
「――っつぅ!」
不意に頭を打った荒木はその場に崩れ落ちる。
けれど蓮は構わず階段を上がり、ドアを開けた。
「…美優」
すぐ横に小さくうずくまる美優を見つけ、蓮はその横しゃがみ込んだ。
長い黒髪が彼女の顔を隠す。
蓮はその髪を掬おうと手を伸ばして、
そのまま下ろした。
「ごめん、でも、美優。俺を信じて?」