図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

「相原さんが階段落ちそうになって、俺が助けたの。

 そしたら、俺の方が転けちゃって、彼女、責任感じて泣いちゃってさぁ。

 で、ここまで付いてきてくれたの。ね?」


荒木は振り返り、美優に笑顔で同意を求めると、


「う、うん」


美優はハンカチを握りしめたまま、コクンと頷く。


「まぁ。いいけどな」


三村はそれだけ言うと、テキパキと治療を始めた。


「相原」


三村の声に美優は体をビクつかせた。


「顔色が悪い。ベッドに寝なさい」

「あ、あの、でも…」


立ちつくす美優に荒木が続けて言う。


「そうそう、それがいいよ」


ほら~っと、背中を押され、美優はゆっくりとベッドに横になった。


見えるのは四方に囲まれた白いカーテンと、白い天上。

白いシーツに、白い光り。


白い世界が美優を覆う。


全部真っ白になればいい。



あの夜のように。





< 161 / 205 >

この作品をシェア

pagetop