図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
美優の横を歩くのは、蓮ではない。
それがとても不思議で、美優はぼんやり前を見ていた。
「…だよね?って、相原さん!」
少し大きめの声に美優はびっくりして見上げた。
「あっごめん、なに?」
荒木は少し哀しそうに小さくため息を付く。
「だから、駅でいいの?って」
「あっ、うん」
美優はまた俯き、言葉の意味に気付いて今度は勢いよく顔を上げた。
「あっ、いいよ!送らなくて!」
それを見て、荒木はクスクスと笑った。
「俺も電車。方向が逆なのは残念だけど」
だから駅まで一緒にと言う荒木の台詞に美優は小さく頷いた。