図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


美優は二日、学校を休んだ。

その間、蓮からの電話もメールも来ることが無く、それが答えなのだと理解した。


駅に降りる。

思わず、探してしまうこの目が恨めしい。

手袋をしていない手は冷たく、美優は口元の持ってきて、はぁと息をはいて暖めた。

けれど、その指先はすぐに冷たくなり、美優はあきらめて歩き始めた。





あの日の帰り、荒木に告白された。


「つき合って」と。


美優は、驚いて顔を上げた。

荒木のまじめな顔を見ることが出来なくて、すぐに俯いてしまった。

そして、静かに首を横に振る。


「まだ、好きなの?」


そう聞かれて、美優は小さく頷いた。

少しの沈黙の後、荒木がまた口を開く。


「友達ならいいよね?」


そう言われて、美優はまた小さく頷いた。


「俺、あきらめないから。相原さんが忘れるの待ってる」


美優は返す言葉を見つけることが出来なかった。


忘れることなんて出来るのだろうか?

いつか、この気持ちが無くなる日が来るのだろうか?



「相原さん、おはよ」


その声に美優は振り返る。


「おはよ」


そこにいるのは荒木だった。


「朝、早いね」


そう言われて、美優は少し笑った。




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