図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「篠宮ぁ。今日も休みか」
朝のSHRに担任の声が教室に響いた。
窓際に誰も座らない席がひとつ。
新はそれを見ていた。
「ちょっと、蓮、どうしたの?」
新は声の主を確かめて、また視線を戻した。
「しらねーよ」
欄はイライラしながら、今度は祐介にくってかかる。
「ちょっと、どーなってんの?」
祐介も携帯をいじりながら「知らない」とだけ答えるから、欄の苛立った顔は更に歪んでいく。
「携帯は没収されてっし、連絡しよーがねーんだよ」
新の吐き捨てるように言った台詞に通りすがったクラスメイトの足が止まる。
「そういや、篠宮、地下で見たぜ?」
その台詞に新は振り向いた。
地下とは『under the ground』と呼ばれるクラブのことで、名前が長いので、みな、『地下』と略して呼んでいる場所。
「マジで?」
新はそいつに飛びつくように肩に手をかけた。
「ん?あぁ、ちらっとだけど、多分、篠宮だと思うけど?」
そいつは「ケバいねーちゃんつれて、篠宮らしいよな?」と笑いながら付け加えて、教室を出ていった。
「どー思う?」
新の言葉に祐介はするりと答えた。
「別れたんだろ?」
その意見に新は賛成した。