図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
昼休憩になり、新は食堂とは違う方向に歩き始めた。
「新?」
祐介の声に「ちょっと」と、ある方向を指さして返した新に、祐介は大きくため息を付いて新の後ろを歩いた。
「どこ行くの?」
欄の声に顔をしかめる二人。
「蓮、探すならあたしも!」
そう言って、欄はその後に続いた。
「ちょっと、ここ、3年の…」
欄の声に二人は反応しなかった。
「すんませーん。美優ちゃん、いる?」
新の声が教室に響きわたる。
その声に振り返る、長い黒髪の彼女。
美優は不思議そうに新を見つめた。
「ちょっと、話あるんだけどいいかな?」
新と祐介は美優ににっこり微笑んだ。
美優は廊下に出て、二人の後ろにいる欄に目がとまる。
「あっ」
美優の小さな声に欄は「なに?」と返したが、美優は目をそらし小さく首を振るだけで何も言わなかった。
「ちょっと、こっち」
新が人気のない方に美優を誘導した。
「ここでいいかな」
教室から離れた階段の踊り場で足を止め美優に振り返った。