図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
第5巻
under the ground
彼はベッドの中で目を覚ました。
隣には昨日会ったばかりの髪の長い女。
蓮はベッドから体を起こし、時計を確認した。
カーテンのスキマから見える光はすでにオレンジ色を帯びていた。
「蓮?」
その声に蓮は振り向くことなく服を着る。
女は体を起こし煩わしそうに髪をかき上げた。
「ちょっと、どこ行くの?」
少しヒステリックな声に蓮は振り返る。
「っさいなぁ。コンビニだよ、コンビニ」
そう言うと蓮はそのまま外に出ていった。
外気が蓮を撫でる。
2月の風は冷たく、蓮はジャケットのファスナーを首まで上げた。
日は落ちかけ、遠くでカラスの鳴く声がいやに耳に響く。
「あー腹減った。金、あるっけ?」
蓮はポケットを探り手の平を広げた。
ちゃり・・・・・・と響くかるい金属音。
「まっいっか」
そう言うと蓮は夕日をまぶしげに見つめて歩き始めた。