図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「under the graound?」
耳にピアスを無数に付けた男は繰り返した。
「あの、知らないならいいんです。すみませんでした」
美優はその男の反応に慌てて頭を下げ、引き返そうとして――。
「待てって」
男は美優の腕を掴み、下卑た笑みを浮かべた。
「知ってるけど…その格好じゃな?」
舌なめずりする男に背中に冷たいものが一本通る。
「い、いえ、もういいですっ!」
そう言って、その腕を思いっきり振り払い美優は逃げ出した。
「待てよ!」
振り返ると、追いかけてくる男が見え、美優は懸命に足を前に動かす。
繁華街は人が多い。
美優はいろんな人にぶつかりながら、人混みをかき分けていった。
「美優?」
いきなり名前を呼ばれ、美優は振り返った。
その瞬間――。
「つっかまーえた」
さっきの男が美優の腕を掴み叫んだ。
「やっ、離して!」
その腕を振り払おうと、美優は体をよじる。
けれど腕は想像以上に強く捕まれて、美優は痛みに顔を歪めた。
「離せよ」
低いその声が二人の上に降りかかる。
聞き覚えのある声に美優は顔を上げた。