図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
2月の夜は寒い。
凍るような空気の中、それでもここには人が集まる。
繁華街。
人が繋がりを求める場所。
「よう、ヒロキって…いつからロリに」
シゲは綺麗な顔に睨まれ口を塞いだ。
「い、いや、でも、まぁ、制服はさすがに…」
そう言って少し困ったようなシゲの台詞を遮り、美優がシゲにつかみかかるように口を開いた。
「蓮くん、来てますか?」
「えっ?は?蓮?」
シゲは目を白黒させて、ヒロキに視線を向けた。
「蓮、居る?」
同じ質問に驚きを隠せずシゲはつぶやいた。
「蓮、なんかやらかした?すっげー有名人じゃん」
「どういう…」
シゲの台詞に反応したのは美優だった。
「いや、新と祐介も聞きに来たし」
「で、蓮は?」
ヒロキはふぅと、白い息をはくとタバコをそばの灰皿に押しあて消した。
「いや、来たには来たけど、もう帰ったぜ?いつものように女と」
美優はシゲの笑う目をじっと見つめ動けず、立ちつくした。
ヒロキは小さく舌打ちすると、美優の手を取り引き寄せた。
「今度、蓮来たら連絡くれ」
それだけ言うと、美優をコートの中にくるみ、人混みの中に歩いていった。