図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
今年のバレンタインは休日と重なることもあって、普段よりは落ち着いている校内。
バレンタインには2日早い金曜日。
それでも、いつもよりざわつく生徒達を横目に美優は図書室に向かった。
3年生の授業はほとんどなく、自主ばかりの毎日。
大学の決まったものは、学校にすら来ないものもいた。
美優はそれでも、学校に毎日来ては図書室で時間を過ごした。
入ってすぐ目にはいるのは大きなカウンター。
その上に置かれた落とし物入れ。
その中には、シャーペンや消しゴム、ヘアピンそして、
2本のネクタイ。
『どうしよう、ネクタイ』
顔を赤らめながら言った美優に蓮は笑った。
「いいじゃん、記念に飾って貰おうぜ?」
そう言って、蓮は笑いながら念を押す。
「絶対、取ったらダメだかんな?」
更に顔を赤くする美優をみて、蓮は笑った。
ほんの3ヶ月前の出来事が遠い昔のように感じられる。
美優はいつもの席に座り、机に伏せた。
本を読むでもなく、ノートを広げるでもなく、
ただ、美優は待っていた。