図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「あの」
そう、声を掛けられ美優は顔を上げた。
そこに見えたのはあのときの一年生、あみ。
彼女の手には小さな紙袋。
声を掛けてきた理由が分かり、美優は視線を落とした。
それでもあみは口を開く。
「篠宮先輩、知りませんか?最近、見なくて」
その質問の答えは美優だって欲しいもので・・・・・。
美優はもう一度あみに視線を向け、左手で髪を耳にかけた。
「ごめんなさい、知らないの」
あみは少し考えてまた口を開く。
「別れたんですか?」
あまりにも単刀直入な質問に美優は驚いて、
それから、困ったように薄い笑みを浮かべた。
それを肯定と受け取ったのかあみは笑顔で言った。
「あたし、遠慮なんてしませんから!」
そう宣言すると、あみは図書室を出ていった。
美優は閉まるドアを確認して、また机に伏せる。
待つという選択肢しか残されていないから。