図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

2月も終わりになると、少し寒さが和らぐ。

かといって、やはり夜は凍るように寒い。

それでも、人はどこからともなく集まる。



ざわめく店内。

明るいとは決して言えない照明。

うるさいくらいに響くBGM。

階下ではビリヤードの甲高い音が響く。

そして、蓮の横には昨日とは違う女。


「俺にもそれチョーダイ?」


少し垂れた目で見つめ、甘えるように囁く。


「これだけ?」


女はタバコを1本差しだした。


「他にもくれんの?」


魅惑的な笑顔を向ける。

途端にその女が頬を赤らめるから、蓮はにっこり笑って女の頬を手のひらで包む。


「何、くれる?」


そして、軽くキス――、


をしようとして、店内の異変に気付き、蓮は舌打ちをした。


一層ざわめく店内。

口々にその名前を呼ぶ。

人だかりの中からその男は出てきた。


「よう、蓮」


不敵な笑みを浮かべ、蓮を見下ろした。

隣にいた女は、すっかり目を奪われ、その男に釘付け。


蓮はもう一度、舌打ちした。

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