図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「な、に?はっ?」
蓮がようやく紡ぎだした言葉はそれだった。
ヒロキはそれを見て、クックッとのどを鳴らして笑う。
「まぁ、その後、どうでもいい女抱いてりゃ馬鹿でも気付くよな?」
その台詞に、蓮は頭に血が上るのを自覚した。
「っさいなぁ!なんであんたにそんなことっ――」
「美優がお前、探してた」
懐かしい名前に
蓮は言葉を飲み込んだ。
そして、出てきた言葉は、
「…いつ?」
蓮の質問にヒロキはひとつ煙を吐いて答えた。
「先週。ここを探してた」
「…なんで?」
その質問には無言しか帰ってこなかった。
五月蠅いほどのBGMも、周りにいる女達の黄色い声も
蓮にはもう届かない。
「だって、あいつが他の男の手を取ったのに」
そのつぶやきに、隣の男が盛大にため息を付いた。
「お前がそうさせたんだろ?」
反応するのはその声にだけ。
「ちがっ、俺は信じろって!」
「手を離した奴が悪い」
つかみかかる蓮にヒロキはそう言い切った。