図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
蓮は掴んだ手を離し、ゆっくりと椅子に座り直した。
「どう、してた?」
ヒロキは蓮を一瞥すると、タバコを灰皿に押しつけた。
「しつこい男にナンパされてたな」
それを聞いて蓮は、ははっと乾いた笑いを浮かべた。
「またかよ?馬鹿なんじゃね?あの女」
蓮はうなだれて、手の先にあるタバコの灰が落ちるのを眺めていた。
ヒロキはゆっくりと立ち上がり、右手を数回ブラブラと振った。
そして呼ぶ。
「蓮」
「あぁ?」
次の瞬間、店内に響くのは乾いた衝撃音。
生気無く上げた顔にヒロキは握りしめた拳で思いっきり殴った。
蓮は何が起きたのか理解することなく、椅子ごと床に倒れこむ。
その音に呼応するかのように、周囲にいた女達の悲鳴が上がった。
蓮はジンジンと尋常じゃなく痛む左頬をかばい、ヒロキを睨みあげた。
「なにすん」
「泣いてたよ」