図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
口の中に広がる鉄の味。
頬はいつまでもジンジンと痛む。
添えた手から熱を帯びているのが分かった。
「っくそ、思いっきり殴りやがって」
蓮はぺっと床に血の固まりを吐いた。
「蓮?大丈夫?」
心配そうに寄ってくるさっきの女。
蓮はその女を押しのけゆっくりと立ち上がった。
「蓮?」
腕にすがりつく女を力任せに振り払った。
「きゃ、ちょっと!」
「さわんな、ブス!」
叫んだその言葉に女は一瞬ひるみ、その後ワナワナと肩をふるわせ、蓮の前から居なくなった。
「いってぇ」
そう言って、蓮は口の周りの血を拭いゆっくりと脚を進めた。
出口に向かって。