図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「それじゃ、3年生は放送があるまで教室で待機ね」
そう言って、担任の先生はハンカチで涙を拭きながら教室を後にした。
「あははっ、先生泣いてたね?」
そう言う、みことの目も潤んでいるから、美優は微笑んだ。
「式って10時からだよね?」
美優の質問にみことは「そうだけど」と、不思議な顔で返した。
そして、その顔は呆れ顔に代わり、ため息をひとつ。
「もう、忘れなよ」
美優は笑う。
「うん。だから行くの」
そう言って、席を立ちいつもの場所へ足を向けた。
ドアの前に立って美優は大きく深呼吸。
そして、開ける。
そこは誰もいない図書室。
静寂のみが支配する。
美優の足音が低く響く。
いつもの席は日が当たり暖かそう。
ゆっくりと座り、ポケットの中のものを机の上に置いた。
-カツン-
小さな音が響く。
それは光りを浴び、輝く。
飾りは何もない。
ただのリング。
美優は左手で髪を耳にかけた。
そのとき、目の端に写るものに気付いて、窓の外に目を向けた。
窓からは太陽の日差しが入ってくる。
美優は目を細め、それを見た。