図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
ピンクのつぼみをたわわに付けたその枝の下。
金色かと思えるほどの髪。
その奥には愁いを帯びた瞳。
制服ではなく、長袖のTシャツに黒のベストダウンを羽織り、彼は見上げていた。
美優は窓に両手をついた。
ガタンと倒れる椅子。
その拍子に光を撒き散らしながら落ちるリング。
カツーンと、音を鳴らしたが、美優には聞こえなかった。
滲む視界。
ちゃんと見たくて手の甲で目を擦る。
その名前を呼びたいのに喉から声が出ない。
出てくるのは涙だけで何度も目を擦った。
蓮はそれを見ていた。
見て、微笑む。
この上なくやさしい顔で。