図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
美優の視線が止まる。
そこにあるべき筈のものが無かったから。
「…ない」
美優は机に手を置いてあたりを見回した。
それから床に座り込み、その下を探す。
「なにか落としたの?」
その声が聞こえないかのように美優は這い蹲って探した。
艶やかな髪が床に着いても、スカートが汚れても気にならなかった。
「どこ?どこにいったの?」
「相原さん!」
図書室に似合わない大きな声に美優は顔を上げた。
「後で探しといて上げるから、早く体育館に行きなさい」
「でもっ!」
言いかけて、美優は口をつぐんだ。
今日は卒業式。
授業をさぼるのとは訳が違う。
美優はゆっくり立ち上がりスカートの埃を払う。
「すみませんでした」
ひとつお辞儀をして、先生の横を通り抜けた。
カウンターに目をやれば、見えるのは忘れ物の入った箱。
きっと、あの指輪もあそこにはいるのだろう。
そんなことを考えながら、ドアを閉じた。