図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「蓮、くん」
その名を口にするだけで、涙がさらに溢れる。
まだ、伝えたいことがあるのに。
美優がもう一度口を開こうとすると、蓮は美優の唇に人差し指をあてた。
そして、やさしく微笑む。
「俺から、言わせて」
美優がその言葉に首を振り髪は揺れれば、涙が光を集めて床に落ちる。
「あた、し、が、」
「ごめん、美優」
そう言うと、蓮は美優を抱きしめた。
美優はそのまま胸に顔を埋め、蓮にしがみついた。
「ごめ、んね。蓮く、ん」
嗚咽混じりに、何度も言葉にする。
「もう、黙って?」
蓮は困ったように笑った。
右手で美優の髪を撫でる。
絡まることなく通るその指には光るものがあった。
近づく顔。
重なる唇。
美優は右手を胸の前で握った。
音のない世界。
聞こえるのはお互いの心音。
そして、美優の甘い吐息。
蓮はくすくす笑いながら唇を美優の耳に寄せる。
「やっ、ぁ…」
声の漏れる唇に蓮は人差し指を立てる。
そして、耳元で囁く。
「ここ、図書室だよ?」