図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
エピローグ
俺は本棚にもたれ座り込む。
美優は俺の中にすっぽり入り込んで頭を俺の胸に預けた。
漆黒の長い髪を一房掬う。
それは絡まることなく、指をすり抜けていった。
俺を見上げる美優の目にはすでに涙はないものの、赤くなっていて、それが俺の心を締め付ける。
「なに?」
何か言いたげな美優にやさしく笑いかける。
「なんで、制服じゃないの?」
美優の質問は最もだった。
俺は一度目を伏せて、一つ息を吐いた。
「俺、馬鹿だからさ、確かめたかったんだ」
美優は何も言わずに俺を見つめていた。
「もう一度、あの場所から見てみたかった」
美優は首をかしげ、流れる髪をとどめるように左手で髪を耳にかけた。
「それ」
俺は笑った。
その仕草が俺の心を捉えた。