図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

階段を飛ばしながら駆け上がり、そのドアを乱暴に開けた。

その音に反応してか、図書室内にいた数人が蓮を見つめた。

蓮の額にはうっすら汗が光る。

そこにいた女達は蓮に見とれ動きを止める。


蓮はそんなことには構わず、キョロキョロしながら脚を前に進めて彼女を探す。

本棚で仕切られた通路を見落とさないようになおかつ迅速に。




「・・・・見つけた」


思わず口にした言葉。


美優は艶やかな黒髪を翻し、蓮を見た。


「あ・・・・」


小さく声を上げて、両手で口を塞いだ。

その拍子に、その手にあった本が床に落ちると不協和音が室内に響き渡った。

周囲の生徒のしせんを一身に浴びる。

と言っても、昼休憩にやってくる生徒は少ない。

けれど、美優は頭を下げて、「すみません!」と、言いかけて・・・・

また、口を両手で塞いだ。

蓮はそんな姿を見て、クスリと笑い、落とした本を長い綺麗な手で拾った。


「はい」


その本を美優に差し出す。


「あ、・・・・ありがと」


美優はおずおずとその本を取った。


「なんの本?」


小さな声で聞く蓮に「えっ?」と美優は聞き返す。

蓮は美優に顔を近づけた。

心音が耳に響く。

自分の心臓がこんなに早く動くなんて、蓮は初めて知った。


「なんの本?」


平静を装い、もう一度耳元で聞き直す。

美優はビクッと体を動かし、一歩後ろに下がる。


「あ、えっと、これは・・・・・」


美優は、俯き口を閉じてしまった。



沈黙が流れる。

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