図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
時折聞こえるのは、誰かがめくる紙のこすれた音だけ。
美優が本を胸に握りしめて、唇を噛んだ。
そして、口を開く。
「さっきの誰にも言わないから」
蓮は心臓が締め付けられるような感覚におそわれた。
美優が俯いたまま蓮の横をすり抜けようとしたとき、その腕を掴んだ。
「きゃっ!」
美優は思わず声を上げ、口をまた手で被う。
落ちる本。
響く音。
「違うって、さっきのは、だから!」
なんて言っていいか分からず、それでも美優に伝えたくて、開いた口は、
美優の手で塞がれた。
蓮はその手の感触に驚いて、声を出すのを忘れるほど。
ゆっくりと離れる白い手。
「ここ、図書室だよ?」
美優が困った顔のまま微笑んだ。
蓮も掴んだ手をゆっくりと離す。
蓮は髪をかき上げ、
「いや、本当にさっきのは、相手が勝手に・・・・」
美優は落ちた本をゆっくりと拾い上げた。
そして、落ちる髪をかき上げ左耳に掛ける。
「見てたよ」
そう言って、振り返る。
髪が揺らめく。
「蓮くん、モテるんだね?」
美優が微笑んだ。
蓮はその笑顔に見とれた。