図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


昼からの授業なんて、眠っていたらあっという間。

授業の終わりを告げる鐘が鳴り響く。


「蓮!どこ行くんだよ?」


こっそり教室から出ようとする蓮を新が呼び止める。


「ちょっと、おれ今日、用事あるから」


それだけ言って、教室を後にした。

階段を下りて振り返る。

悪友がついてきてないことを確かめて、蓮は走った。

図書室目指して。

階段を駆け上がり、ドアのまで息を整える。

そしてゆっくりとドアを開けた。

美優が座るいつもの場所へ脚を向ける。

けれど、まだ美優はいなかった。


「まだか・・・」


思わず口にして、蓮は美優がいつも座る席に座ってみた。

自分が寝転がる木陰がばっちり見える。

蓮はその席に伏せた。

目を瞑り、まだ来ぬ人を待つ。

しばらくして向かい側に、人の気配を感じ顔を上げた。


「美優!」


思ったよりその声が大きく、蓮は右手で口を押さえた。

美優はクスリと笑って人差し指を口の前で立てた。

その手で、髪ををなぞり、耳に掛ける。

いつもの仕草。

それから参考書とノートを広げて、カチカチとシャーペンの芯を出した。


「勉強?」


蓮は両手を机の上で組み、その上に頭を置いて美優を見上げた。


「受験生だからね?」


美優はふんわりと笑う。
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