図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
勿論、読みたい本なんて無い。
ブラブラと本棚を見て歩く。
それでも、何か手にしないとあの席には帰れないから、適当に小説を抜き取って、蓮は美優の元に帰る。
向いの席に座り美優を見ると、彼女は参考書を見ながらノートに書き写す。
たまに聞こえる、カチカチというシャーペンの音。
蓮は適当にページをめくりながら、美優を眺めていた。
「・・・ん、・・・くん、蓮くん?」
緩く肩を揺さぶられる。
-寝てたのか・・・・-
自分の状況を考えながら、薄く開いた目から見えるのは・・・、
揺れる黒髪と、美優の顔。
蓮は驚いて、顔を上げた。
-ゴンッ-
「ってぇ」
「いったぁぃ」
屈んでいた美優の額と、蓮の頭がぶつかりお互い、その場所を両手で覆った。
蓮は瞬時に何が起きたか悟り、すぐに美優を見上げた。
「ご、ごめん、大丈夫?」
美優は額にあてた手をゆっくりよけて、少し涙目で笑う。
「大丈夫・・・」
額は少し赤くなっていて・・・・。
「ぅわっごめん」
蓮はそう言って、自分の手を美優の額にあてた。
その肌はすべすべで、ほんのり暖かくて、柔らかくて・・・。
夕日に染められた美優の肌はオレンジ色だった。
「もう、閉館だよ。帰ろ?」
美優が微笑む。
-もっと、一緒にいたい-
いつもなら簡単に言える台詞が、美優には言えない。
蓮は立ち上がって「うん」と頷いた。