図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

校内は夕焼けに染まり、あたりはすべてオレンジ色。

美優の髪だけはそれに染まることなく黒くなびく。

門のところまできて、美優が蓮を見上げた。


「じゃあね」


にっこりと美優が笑う。


「えっちょっ、待って」


蓮は慌てて美優の腕を掴んだ。

振り返り、不思議そうに見つめる美優。


「えっと、・・・そう!駅まで送るよ!また昨日みたいに・・・な?」


ひねりも何もない台詞に自嘲してしまいそうになる。


「でも、遠回りなんじゃ・・・」

「ならない!俺、帰り道だから、ぜんっぜん、気にしないで!」


一生懸命力説する自分が間抜けに思えて仕方ない。

それでも、少しでも長くそばにいたいから-。



「じゃあ、駅までお願いね?」


美優がクスクス笑う。

一緒に歩く駅まで15分の道のり。

手を伸ばせば、彼女の肩だって抱けちゃう距離。

でも、出来なくて・・・・。

もどかしさに頭がおかしくなりそうになりながら、言葉を探す。


「美優は休みの日、なにしてんの?」


これじゃ、ナンパと変わんねーじゃん!

自分につっこみながら、それでも知りたくて、聞いた。


「うーん、本読んだり、友達と買い物とか・・・かな?」


美優は特に気にすることなくさらっと答えた。


「本、好きなんだ」

「うん、好き。だから、図書室も好き。楽しいでしょ?」


その意見には賛同できなくて、蓮は苦笑いを浮かべた。


「蓮くんは?」


逆に聞かれて・・・・。


「あいつらと街いって・・・・。遊んだり、かな?」



『ナンパしてます』なんて言えねー。



蓮は美優から目をそらした。

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