図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
祐介の声に蓮は振り返った。
その隣には震える美優。
両手で口を被い、眉はハの字、黒目がちな瞳は潤んで・・・・今にもこぼれそうな涙。
蓮の力が抜けた瞬間。
『冬月くん』は、胸元の手を振りほどき這うようにその場から走って逃げた。
そんな男のことはもうどうでも良くて・・・。
「あ、・・・美優?」
言葉が見つからない。
「もう、大丈夫だよ?」
祐介が代わりに美優に告げる。
「お前、手ぇ早すぎ」
新が蓮の肩をポンポンと叩いた。
その後、新と祐介が美優の隣を歩いて、その後ろに蓮。
駅はすぐそこで、美優は俯いたまま「ありがと」と、小さくつぶやいて、改札口に走って行った。
「じゃあね、美優ちゃん」
「気を付けてね~」
二人がひらひらと手を振る。
蓮はただ、その後ろ姿を見送った。