図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「・・・んっ、蓮く・・・・ん」
蓮の腕の中にいる美優が小さな声を上げる。
「くる・・・しっ・・・」
蓮はその言葉の意味を理解して、ぱっと腕を解いた。
「はぁ」
美優の大きく息をはく音が聞こえる。
「っごめん!」
蓮は理性を呼び戻し、美優を見た。
酸欠の美優は少しぐったりして、蓮に寄りかかれば長い黒髪が腕に絡みつく。
また、理性を手放しそうになったとき、列車は止まりドアを開けた。
入り込んでくる冷たい空気、そして二人は人波に流されるようにホームに降りた。
蓮はふらふらする美優の手を掴んで・・・。
「美優・・・ごめんってか、大丈夫?」
蓮はそのまま近くのベンチに美優を座らせた。
「うん」
美優はいつもの笑顔をみせるから、蓮はほっとするように息を吐いた。
「ごめん」
もう一度口にする。
美優は首をふるふると振った。
「ありがと、心配してくれて」
その無防備な笑顔に蓮は一瞬息を呑んで――、
力無く、美優の隣に座った。
うなだれる蓮を不思議そうに美優がのぞき込む。
その視線に気付いて、蓮は顔を上げた。