図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
蓮が重たい口を開く。
「あのさ」
美優の笑顔がその言葉の飲み込ませようとしたけれど、蓮は続けた。
「あいつが元彼?」
その台詞に美優の笑顔が凍る。
そして、俯いて美優はコクンと頷いた。
「・・・なんで、あんな奴と・・・」
自分も大差ない人種なんだと自覚はあったけど、言わずにいられなかった。
「中学のとき、好きだったの」
美優がぽつりとつぶやく。
「そのときは告白なんて出来なくて、ちょっと前、偶然会ったの」
美優が左手で髪を撫で耳に掛ける。
「すっごいうれしくて・・・そしたら、冬月くん、つき合おう?って言ってくれて・・・・」
美優の顔が、電灯に照らされ白さを増した。
「本当にうれしくて・・・・」
美優の顔が陰る。
「でも、あのころの冬月くんとは別人で・・・」
蓮は何も言わずにただ、美優の言葉に耳を傾けた。
「つき合って、1週間くらいでキスされそうになって・・・拒んだら、もういいって・・・」
美優の瞳から真珠がこぼれ落ちた。
「もういいよ」
蓮は美優を抱き寄せた。
「嫌だったんだろ?」
美優が蓮の腕の中でコクンと頷く。
「じゃ、別れて正解だったんだよ」
抱きしめて耳元で囁く。
「でも・・・・」
震える声で美優がつぶやく。
「好きだったの」
蓮は美優の言葉にズキンと響く胸、それを綺麗に隠して美優に教える。
「ほら、過去形じゃん?」