図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


「ふあぁぁ~」


翌朝早く、蓮の姿は駅前の階段にあった。

いつもなら、起きる時間。

けれど、今、蓮はあくびをしながらここで待つ。

勿論それは・・・。


「蓮くん?」


黒髪が光りにすけて、キラキラと光る。

それを左手ですくい、耳に掛ける。

黒目がちな瞳はびっくりしたように蓮を見ていた。


「おはよ」


そう言って蓮は笑顔を向ける。


「おはよぅ」


少し間延びした声は蓮の心をくすぐる。

蓮は立ち上がり、美優のとなりに位置した。


「本当にいると思わなかったよ」


美優がクスクス笑いながら蓮のとなりを歩く。


「なんで?一緒に行くっつったら行くの!」


蓮は胸を張って言い切る。



こうして歩くだけで幸せ・・・・・なんて思えなくて、欲を言えば手を繋ぎたい。

もっと、言えば肩を抱いて・・・・、もっと言えば・・・・きりがない。



もどかしさに蓮は心の中で地団駄を踏む。

そんな蓮には気づかず、美優はにっこり微笑む。

いつもの笑顔。

蓮の心臓はそれにやられてドキドキしっぱなし。


「ヤバイッて、それ・・・」


顔をそらして蓮に、


「ん?なぁに?」


と、美優が不思議そうに覗き込んだ。





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