図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
キスまでの道のり
昼休憩。
蓮は昨日と同じように席に座って待つ。
窓からは綺麗な秋晴れの陽が目に入る。
その眼下には、ちょっと前まで自分が女を待っていた木陰。
勿論そこに蓮の姿はない。
なのに、また一人のお客さん。
綺麗な巻き毛。制服は着崩して・・・・あれは欄だ。
「・・・ったく、彼氏大事にしろっつーの」
全くもって人のことは言えない身だけど。
「なぁに?」
甘い声が蓮の耳をくすぐる。
「なんでもない」
蓮は見上げて笑えば、彼の髪が光に透けて金色に輝く。
その笑顔は極上。
それを向けられた彼女の頬が桜色に染まる。
その手には1冊の本。
「それ、読むの?」
蓮には何の本かは分からないけど、かなり分厚い。
「うん。蓮君は?」
カタン、と小さな音を立てて彼女が座る。
「俺は・・・・・いいや」
もともと本を読む趣味があるわけではない。
ここに美優がいるからいるわけで。
蓮は両手で頬杖をついた。
美優はにっこり笑って、いつものように髪を耳にかける。
漆黒の髪が流れる。
その肌は光に透けるように透明感がある。
なのにその唇はピンク色で、妙に艶かしい。
その唇にはリップもグロスもついていないのに。