図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
蓮は走った。
勿論向かう先は図書室。
さっきの彼女とは円満……ではないにしても、ちゃんと断って。
『最後にキスして』
その誘惑すら振り切って。
俺って成長した?
なんて、思ったりしながら。
図書室の前で脚を止めて、息を整える。
ゆっくりとドアを開けて、静寂が支配する空間に踏み込んだ。
音を立てないように、足早にいつもの席へ向かう。
机には彼女のノートと参考書、そしてシャーペン。
けれど美優はいなかった。
でも、ここにいるのは明らかで、蓮は席に着くことなく美優を探し始めた。
本棚の間を覗いては次へ脚を進める。
「ありがと」
少し奥から聞こえる男の声。
「どう致しまして」
続くのは、あの声。
蓮は声の主を確かめる。
「あのさ、相原さんっ」
見えたのは全く図書室に似合わないさわやかスポーツ系男と美優。
「はい?」
美優が男に向ける顔はいつもの笑顔。
そんな光景に蓮の心は一気にざわつき始める。