図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


「嫌・・・じゃなかった?」


蓮はおそるおそる聞いてみる。


美優は耳まで顔を赤く染め、指を唇にあてる。

そして、目を閉じ首を横に小さく振った。

その仕草に心音はますます大きくなる。

美優は目を開け、まっすぐに蓮を見る。

いやに艶めかしい唇が動く。


「蓮くんは・・・なに怒ってたの?」


美優は首を傾ける。

肩から流れ落ちる黒髪は夕日を浴びて輝く。


「なにって・・・・・」


蓮は俯いた。

そんなことはもうどうでも良くなっていたから。

でも、またこんな事があったら・・・。

だから蓮は口を開く。


「もう、他の男のために本なんて探すなよ?」


美優からの返事はない。

顔を上げると、不思議そうに見つめる美優が目に入った。


「どうして?」


とぼけた返事に苛立ちすら感じる。


「『どうして?』現にさっきの奴はっ!」


美優が人差し指を唇に立てる。

唇がいやに強調されて蓮は目をそらした。


「いいから、なんでもいいから、もう探すなよ?」


蓮はふてくされるように言い放つと、美優は意味が分かったのか分からないのか・・・・小さく「うん」とだけ返事をした。


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