図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
美優の背中にあった蓮の手はそのまま下へ降りていく。
指に流れる黒髪は絡まる事はなく、夕日を受けて輝きを増す。
蓮の指がブラウスのボタンを探し当てた。
それを外そうとしたとき――。
リーンゴーン-・・・
鳴り響く鐘に蓮は我に返った。
腕の中にはぐったりとした美優。
その重みと、さっきまで捕まれていた腕の痛みが蓮の罪を認識させる。
「・・んっ・・・・・はぁ・・・・」
美優が腕の中で小さく息をするが首筋をくすぐる。
「・・・・美優?」
小さな声で呼ぶと、返事の代わりに美優はうつろな目を蓮に向けた。
そして、美優は蓮の腕を掴みその胸に体を預けた。
「・・・・してる」
美優がつぶやく。
「なに?」
聞き取れなくて、蓮は聞き直した。
「ドキドキしてる」
美優がかすかに笑う。
「美優だって・・・」
背中に置かれた手から伝わる美優の心音。
『閉館の時間です。全員退室して下さい。』
図書室内に流れるアナウンス。
「帰ろ?」
美優が蓮を見上げる。
蓮は返事をする代わりにぎこちない笑顔を浮かべた。