図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】


帰り道。

二人の距離は朝より遠い。


どーすんだよ?これ!


脳内で一人つっこみを入れて、蓮はそっと隣を見た。

美優は俯いたままこちらを見ない。


怒ってはないみたいだけど・・・。

いっそ、あのままやった方が・・・。


蓮は頭を振った。


いや、あそこで踏みとどまって正解。

あのとき、鐘が鳴らなかったら・・・・。


蓮は想像して、背筋に冷たいものを感じた。


「あ、のね、蓮くん」

「な、なに?」


遠慮がちな美優の声に過剰なまでに反応し、声は少し上擦って笑顔は少し引きつる。


「腕、痛い?」


蓮はなんのことか分からず美優を見ると、彼女は下を向きその表情は髪に隠れて見えない。


「あの・・・思いっきり掴んじゃったから・・・。ごめんね?」


蓮は美優の揺れる髪を見て、それから自分の腕を見た。

ちょうど、袖をまくったすぐ下の皮膚が赤くなり少し血を滲ませていた。

それを見つめる美優の視線に気付き、蓮は急いで袖を直した。


「いやっ、全っ然たいしたことないから!」


蓮は腕を振って全力で否定した。

< 67 / 205 >

この作品をシェア

pagetop