図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
帰り道。
二人の距離は朝より遠い。
どーすんだよ?これ!
脳内で一人つっこみを入れて、蓮はそっと隣を見た。
美優は俯いたままこちらを見ない。
怒ってはないみたいだけど・・・。
いっそ、あのままやった方が・・・。
蓮は頭を振った。
いや、あそこで踏みとどまって正解。
あのとき、鐘が鳴らなかったら・・・・。
蓮は想像して、背筋に冷たいものを感じた。
「あ、のね、蓮くん」
「な、なに?」
遠慮がちな美優の声に過剰なまでに反応し、声は少し上擦って笑顔は少し引きつる。
「腕、痛い?」
蓮はなんのことか分からず美優を見ると、彼女は下を向きその表情は髪に隠れて見えない。
「あの・・・思いっきり掴んじゃったから・・・。ごめんね?」
蓮は美優の揺れる髪を見て、それから自分の腕を見た。
ちょうど、袖をまくったすぐ下の皮膚が赤くなり少し血を滲ませていた。
それを見つめる美優の視線に気付き、蓮は急いで袖を直した。
「いやっ、全っ然たいしたことないから!」
蓮は腕を振って全力で否定した。