図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

美優は少し顔を上げて恥ずかしそうに笑った。

その顔はまだ赤くて、蓮の心をくすぐる。


「いや、それより・・・・俺のほうこそごめん」


美優が不思議そうに首を傾げる。


「・・・・初めて、だよな?」


蓮の台詞に美優の顔をさらに赤くなる。



やっぱり――


蓮は美優から目をそらした。


「あんなの・・・・嫌、だよな?」


美優は俯いて歩みを止めてしまった。


「美優?」


横に居ない美優に気づき蓮は振り返った。



「・・・・じゃなかったよ?」



小さな美優の声。

蓮は近づく。


「なに?」


聞こえなかったわけじゃない。

もう一度、聞きたくて聞き返す。

美優が蓮を見上げた。


「嫌・・・・じゃなかったよ?」


美優のその台詞に蓮は満足げな笑顔を浮かべた。

月の光に透ける髪。

整った顔が甘く笑う。

美優はその笑顔に見とれた。


「はい」


差し出す蓮の手に美優が一瞬固まり、首をかしげた。


「手」


蓮は催促するように手をさらに差し出す。

美優は、少し躊躇して、ゆっくりと差し出された手に自分のそれを重ねた。


蓮が手を握る。

少し強く。

駅はすぐそこ。


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