図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「あーちくしょう!また、負けたぁ」
篠原ヒロキといつもつるんでいる藤井智仁の声だった。
ヒロキがその彼女の隣に座り、彼女の手の中にあるスミノフを口にする。
明らかに自分の女扱い。
不意にヒロキが見上げるから、蓮と目が合ってしまった。
ヒロキは微笑を浮かべ、手のひらを上に向け人差し指をクイクイっとまげて蓮を呼んだ。
「ぅわって、蓮くん呼ばれたんじゃない?」
隣の女が騒ぐ。
「あたしも一緒にいってもいい?」
はしゃぎながら蓮の腕に自分のそれを絡ませた。
蓮はため息をひとつついて、席を立った。
階段を下りて、彼の前で脚を止める。
「久々かな?蓮」
ヒロキは短く挨拶じみた台詞を蓮にはいた。
「あんたが、来なかっただけっしょ?」
蓮は愛想笑いを浮かべた。
「ってか、それ彼女?」
隣に座る彼女に目を向けた。
ヒロキは何も言わず薄く笑みを浮かべるだけ。
「珍しいタイプなんじゃね?」
蓮はその彼女ににっこり笑い掛けると、その彼女はびっくりしたようにヒロキの腕の後ろに顔を隠した。
「お前は相変わらずだな?」
ヒロキがクスリ笑う。
その台詞に、その笑いに、蓮の自尊心は刺激される。
「おぁ、蓮じゃん」
蓮の背中を叩いたのはトモ。
「だれ?」
振り返るとトモの横にはかなりの美人。
「うーん、弟みたいな感じかな?」
「違う!」
トモの説明に蓮は思いっきり否定すれば、ヒロキは声を出して笑う。
3人がそこにいるいるだけで、店内の注目を集めていた。