図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
いや、俺も手に入れたはず――。
蓮はひなに美優を重ねた。
同じなのはその長い黒髪だけなのに。
「帰ろ」
蓮は踵を返した。
「ん?もう帰んの?」
トモがタバコに火を付けながら聞いてきた。
「アホらしくなってきた」
小さくため息をつく蓮に「だろ?」とトモが笑う。
そして、二人でヒロキの方を見た。
「んだよ?」
ヒロキが二人を睨むが、蓮は意に介することなくトモのタバコを一本抜いた。
「こらこら高校生」
トモの声なんて無視して「火は?」と口にすれば、ヒロキはジッポを取り出し火をかざす。
だから蓮はヒロキにタバコをくわえたまま近づいた。
その様はとても絵になる。
周りのギャラリーが吐息にも似たため息を吐くのが分かった。
「ガキのくせに」
ヒロキが言う。
「俺も見つけたよ」
蓮は煙とともに台詞を吐いた。