図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
蓮は躊躇した。
抱きしめるのは簡単。
問題はその後。
止まれる自信なんて無かった。
それでも――。
蓮は美優を抱きしめた。
その後なんて知らない。
どうでもいい。
きつく抱きしめる。
「大丈夫、美優は受かるよ」
気休めにしかならないのは分かっていたけど美優に伝える。
「蓮くん・・・・・・」
美優の手からココアの缶が音を立てて落ちた。
地面に広がるココアはあたりに甘い香りを残す。
「ありがと」
美優が蓮に体を預けるようにその腕にすがる。
髪が流れる。
その腕に美優の息を感じる。
共に重みが蓮の腕に伝わる。
その重みが蓮の理性をつなぎ止めた。
蓮は唇を噛みしめて、決意する。
「もう、家まで送るよ」
腕の中で笑う美優を見てよかったと、蓮は心の中でほっと息をついた。