図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
帰り道、二人の影は日に日に長くなり、寄り添う。
今日は金曜日。
となると、明日は土曜日なわけで。
「明日、ヒマ?」
突然の蓮の言葉に美優は一瞬驚きつつもコクリと頷くと、蓮ははにかむように笑った。
「どっか、行かね?」
その台詞に美優がつられるように微笑む。
「どこ?」
その答えを用意していない蓮はうーんと唸る。
「気分転換!」
そんな台詞に美優はクスクス笑い「いいよ」と返した。
駅まで送り、時間を決める。
「俺、絶対先に来て待ってるから」
あまりに力説するものだから美優は笑ってしまう。
蓮は美優を見送った。
その姿が完全に見えなくなるまで。
それから来た道を帰る。
実をいうと家は完全に駅とは反対方向。
それを言ったらきっと美優は「送らなくていいよ」と言うのが分かっているから、言わない。
蓮の足取りは軽い。
考えるのは明日のこと。
遠足前の子供のように気分がいい。
空を見上げると蓮の心を写したかのような満月。
きっと、明日も晴れだ。
蓮は心の中で予報した。