図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
土曜日は蓮が予報したとおりの秋晴れ。
蓮は、約束の時間より15分早く到着して改札口で待った。
電車がホームに止まりドアが開く。
人が押し出されるようにホームに降りてくる。
どんなに人で溢れて居ても蓮には分かる。
長いつややかな黒髪が光に踊る。
「蓮くん」
いつもの笑顔を浮かべて。
私服の美優は2回目。
胸元で切り替えされたワンピにカーデを羽織り、足下はロングブーツ。
日本人形のような漆黒の髪が揺れ、黒目がちな瞳はまっすぐに蓮に向けられる。
「はい」
蓮は手を差し出す。
美優は躊躇することなくその手を取った。
それが今の二人の距離。
特に目的もなく二人で歩く。
近くにある大きな公園。
意味もなくハトに餌をヤリ、ボートに乗って太陽の日差しを浴びる。
二人で話して、二人で笑う。
水面から光りが照り返し、美優の笑顔が輝く。
「疲れた?どっかでお茶でも飲む?」
蓮の言葉に美優は小さく頷いた。