図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

街中に戻り、手を繋いで歩く。

ふと視線を感じ、蓮は前を向いた。

相手を確かめ顔を命一杯不機嫌に歪める。


「よぅ、蓮」


目の前には大型犬が二匹。

だれかちゃんと鎖でつないどけよ。

心の中で叫びは誰にも聞こえない。


「知り合い?」


美優は相手を知らないらしく、蓮を見上げた。


「そうそう、蓮の兄です」


笑いながら答えたのはトモ。


「なわけねーじゃん!」


即答したのは蓮。


「で、紹介してくれんの?」


不敵な笑みを浮かべるのはヒロキ。


「ってか、なんで日中歩いてんだよ!」


蓮は噛みつくように吠えた。


「・・・・・・俺は夜行動物か?」


ヒロキはクスクス笑いながら美優を眺めた。


「名前は?」


美優は聞かれふんわり笑った。


「相原美優です」


その態度にヒロキは一瞬固まり、口の端を上げた。


「美優ね、俺は篠原ヒロキ。こいつの尊敬する兄です」


ヒロキが笑みを浮かべる。

美優はキョトンとしてヒロキを見つめた。


「名字違うのに?」


美優は首を傾げる。


「ちがーう!兄でもないし尊敬もしてない!」


本気で叫ぶ蓮に、ヒロキとトモは声を出して笑うだけだった。

< 94 / 205 >

この作品をシェア

pagetop