図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
街中に戻り、手を繋いで歩く。
ふと視線を感じ、蓮は前を向いた。
相手を確かめ顔を命一杯不機嫌に歪める。
「よぅ、蓮」
目の前には大型犬が二匹。
だれかちゃんと鎖でつないどけよ。
心の中で叫びは誰にも聞こえない。
「知り合い?」
美優は相手を知らないらしく、蓮を見上げた。
「そうそう、蓮の兄です」
笑いながら答えたのはトモ。
「なわけねーじゃん!」
即答したのは蓮。
「で、紹介してくれんの?」
不敵な笑みを浮かべるのはヒロキ。
「ってか、なんで日中歩いてんだよ!」
蓮は噛みつくように吠えた。
「・・・・・・俺は夜行動物か?」
ヒロキはクスクス笑いながら美優を眺めた。
「名前は?」
美優は聞かれふんわり笑った。
「相原美優です」
その態度にヒロキは一瞬固まり、口の端を上げた。
「美優ね、俺は篠原ヒロキ。こいつの尊敬する兄です」
ヒロキが笑みを浮かべる。
美優はキョトンとしてヒロキを見つめた。
「名字違うのに?」
美優は首を傾げる。
「ちがーう!兄でもないし尊敬もしてない!」
本気で叫ぶ蓮に、ヒロキとトモは声を出して笑うだけだった。