図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】

「どこ行くの?」


トモの問いかけに美優は笑顔で答える。


「今から、お茶――」

「どーでもいいだろ?」


噛みつく蓮を横目にトモが言葉を被せる。


「いいねぇ、お茶!」

「どこ行く?この兄がおごってやるよ」


ヒロキがトモに続く。


「いいから、どっかいけよ!」


蓮は二人を押しやるが、まるでぬかに釘。

そのそばで美優は少し首を傾げて「あっ」と、小さくつぶやいた。


「なに?」


3人注目されながら美優はヒロキを見上げた。


「いえ、篠原さんって、あの作家の?」


言われて、ヒロキが笑顔を浮かべ肯定した。


「あなたの小説読みました。すごく感動したの覚えてます」


まるで告白のような台詞に蓮の顔は不機嫌に歪む。


「ありがと、そこまで誉められると奢らないわけいかないよな?」

「あっ、いえ、そんなつもりじゃ・・・・・・」


首を横に振る美優をヒロキとトモは「まぁまぁ」といいながら連れて歩いた。


「ちょっと、待てよ!」


一人、置いてけぼりにされた蓮はあわてて3人を、いや、厳密には拉致された美優を追いかけた。

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