図書室ではお静かに~甘い声は唇で塞いで~【完】
「で、美優ちゃんは蓮の同級?いや、下かな?」
トモの質問に美優は首を振った。
「いえ、あたし高3です」
その答えにトモが驚く。
「上?って、受験生か!」
美優は笑顔で「はい」とだけ答えた。
店員が震える手で飲み物を運んで来た。
食器のぶつかる音が店内に響く。
「失礼しました」
店員がぎこちなくお辞儀をして下がっていった。
「どこ受けるの?」
ヒロキがカップを口にしながら問いかける。
「総合中央――」
「どこでもいいだろ!」
美優の答えに慌てて蓮は声を被せた。
そんな蓮の態度に、ヒロキは意地悪な笑みを浮かべる。
「へぇ、後輩かぁ」
楽しげにそう口にするヒロキを睨んだりするものだから――。
「そんな、睨むなって」
クスクス笑う、その顔ですら様になる。
男の癖に『綺麗』という言葉がよく似合う。
その上、美優に尊敬されるような作家と言う肩書きを持つこの男に『嫌い』という感情を持ったとしてもそれはごく自然なことなのかもしれない。
そして、この感情はただの嫉妬だという自覚は十分にあるのだ。