MAO【BL】
プロローグ
「マオ……ッ!」
屋上に虚しく響くこの声は、果たしてアイツに届いているのだろうか。
「約束、まさか忘れた訳じゃねーだろ!?」
それでもなお、フェンスの向こうのマオに必死で問い掛ける。
だけどマオは自分の爪先の、更にその下の景色を無表情に見詰めているだけで。
「マオ……ッ、頼むから……、俺の声、聞いてくれよ……マオ!」
マオは、何を考えているのかいつもわかんなくて、ホント意味不明なヤツで。
だからなのかどんどん目が、離せなくなって。
マオの中身がわからなくて、知りたくてしょうがなかったけど、今ならわかる。
マオが、これからしようとしていること。
マオの方へ、一歩踏み出そうとした時だった。
「怜(リョウ)」
小さく、だけどはっきり、名前を呼ばれた。