恋がしたくて…
化粧
化粧をする時間が好き。
化粧は防具であり、戦闘具である。
素顔の自分を隠す事により、少しだけ 大胆になれる。

そう。
小さな 女優に変身する瞬間だ。

化粧をすると 安心する。
今日もこれで 偽りの私を 演じきれる。
そんな風に、やる気と安心感に包まれる、毎朝のメイクタイムが好きだった。

でも、子供が生まれて 化粧をほとんどしなくなった。
いつも いつも 子育てにおわれてたからだ。
『女』を意識する余裕などなかった私は、
『女』を演じる必要もなかったから。

『あー。
なんか ソバカス増えてない?
って言うか、これ、シミじゃない?』
久しぶりにゆっくりと鏡をのぞいた私は、ギョッとした。

友達と
「ソバカスって、直径何ミリまで?」
「何ミリ以上の大きさになったら シミって言うのー?」
と笑いながら話してた日を思いだす。

あの頃は まだ若くて余裕があった。

自分に シミが できる日なんか まだまだ先だと 思ってた。

このまま 終わりたくない。
もう一花 咲かせたい。

化粧しよっかなぁ…。
そうだ!
働きに出よう!

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