恋がしたくて…

いざ出陣！

出勤数日前。
初出社を目前にして、鏡の前で予行練習！
何週間も前から 考えていた服を着て、久々にメイクをしてOLに変身してみる。

変身後の自分を想像しながら、ニヤニヤと笑いながら鏡の前に立った私は、愕然とした。

まるで 七五三だ…。
全く 板についてない…。

外敵にさらされない『家庭』という ぬるま湯に浸っていた私の皮膚。

それは すっかり たるんでしまっていて、まるで寝ぼけた顔のようだった。


出勤当日。
数日前の鏡にうつる自分を思い出し、ブルーな気持ちで 支度をする。

「社会と 接したい」
「外気に ふれたい」
と、衝動的に 働く事を 決めてしまったけれど。
果たして ずっと 家に居た私に 仕事ができるんだろうか…？

「もう一花 咲かせたい」
なんて、とんでもない！

急に 不安になる。

そして ぬるま湯の『家庭』に 逃げ帰りたくなる。

でも時間だ！
急がなきゃ！
もうすぐ 出なきゃ！

そう思い、半ば投げやりになった私は コートを羽織り、鏡を見た。

……。
イケてる。

うんっ。
イケてる！

そこには 懐かしい私がいた。

何年か前に 働いていた頃の アタシ。

緊張感で ちょっとしまった顔が 妙に 女っぽくて。

女として。
女を武器にして、
勇ましく 社会と 闘っていた頃の私がいた。

鍵をまわす、指先の動きまで変わっていた。

丁寧に ぬられたネイルアートのせい？
それとも、私自身の中の 何かが また 目覚めたせい？

いざ出陣だ。

会社に行こう！